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日豪EPAとは?オーストラリア在住の日本人として考えてみた。

2014.04.15.(Tue)Chieko By.Chieko
カテゴリー:ニュース 料理

パース在住主婦ライターChiekoです。

EPA-top

日中は忙しいし、夜は疲れて寝てしまうので、家にいてもなかなかTVを見ることがありません。
朝や夕方は、食事の支度をしながらラジオを聴くこともありますが、英語のニュースを正確に聞き取ることは、まだできません・・・(涙)。

そんなわけで、ちょっと子どもの世話や家事が一段落した時に、スマホでオーストラリアのニュースサイトをチェックするようにしています。
特に、日本と関連のあるニュースは、できる限り読むようにしています。
自分自身の英語の勉強のため、というのも大きいですが、海外から見た日本ってどんな感じなのか?日本のどんな出来事が海外では注目されるのか?といった、「日本の外から見た日本」という視点が垣間見れるのも、私にとっては面白いです。

Naoさんも前回の記事で書いていますが、やはりオーストラリアに住む日本人として、両国間の関係に関わるニュースは自然と気になってしまう、というのは、私も同じ気持ちです。

4月7日に、安倍首相とオーストラリアのアボット首相が日豪EPAに『大筋合意』したと報道されました。

このことを、私は日本のニュースサイトとオーストラリアのニュースサイトの両方で読みましたが、まるで同じ問題を表と裏から見ているようで非常に興味深く、考えさせられました。

そこで今回は、オーストラリアのニュース記事を読みながら、日豪EPAについて自分なりに調べてみたことをまとめたいと思います。

難しいテーマなので、理解が不十分なところもあるかと思いますが、特に私にとって身近である、食や消費に焦点をあてて書いてみたいと思います。

 

  • まず、日豪EPAとは何か?

今回、安倍首相とアボット首相が結んだ、日豪EPA。
日本・オーストラリア経済連携協定のことで、EPAとはEconomic Partnership Agreementの略だそう。

EPAの柱といわれているのが、FTA(自由貿易協定:Free Trade Agreement)です。
FTAとは、自由貿易を促進するため、関税やさまざまな規制を取り除くことを2国間(またはそれ以上)で取り決める協定のこと。

EPAは、このFTAに加え、投資の自由化や知的所有権など幅広い分野での経済連携を目的とした協定とのことです。

日豪EPAというのは、輸出入の際の関税の撤廃を柱としながら、それ以外の幅広い分野についても将来的には自由化が進んでいく 、ということなのかな・・・と思います。

しかし、細かい言葉の定義についてはこういうことになっているそうですが、実際にはやはり輸出入の関税撤廃や規制解除が今時点ではメインの議論となっているのではないかと思います。

 

この日豪EPAの交渉が始まったのは、7年前(2007年)だそうです。
(知らなかった~!)

オーストラリアは以来、日本への輸出品に対して強く関税撤廃を求めてきたそうです。
けれど、オーストラリアからの輸入品目は日本にとっての重要品目が多く(牛肉、チーズ、麦、砂糖、米など)、これらの関税を撤廃することは日本の農業や関連産業に打撃が大きすぎるとして、日本側は協定の受け入れを渋ってきました。
そのような中で、今回、急速に締結へと至りました。
その背景としては、今後、アメリカとTPP交渉を行うことを視野に入れ、日豪両国ともにEPAの締結が有利に働くとの思惑があったようです。

 
  • オーストラリアのニュースではどんなことが書かれているか?

日豪EPAの締結は、オーストラリア国民にどのようなメリットがあるのでしょう?

オーストラリアのニュース記事から、ピックアップしてみると、

◆電化製品(冷蔵庫、電子レンジ、ステレオ、エアコン、食洗機など)
毎年日本からオーストラリアに1.3億ドル分が輸入されている。EPAにより全体で5%ほど安くなると見込まれる。

◆自動車産業
オーストラリアは毎年6.8億ドルの日本車を輸入している。現行5%の関税がかかっているが、EPAが導入された場合、輸入車全体のうち75%の車がただちに関税撤廃され、残りも3年後には撤廃。
日本車は1台につき平均1500ドル安くなると見込まれる。

◆牛肉と乳製品
オーストラリアの生産者にとって有利な内容。現行38.5%の関税を、十数年後に冷凍肉は19.5%に、冷蔵肉は23.5%に減額。

◆チーズ、ワイン、海産物
オーストラリアの生産者は日本市場へ新たに進出しやすくなる。

◆缶詰
野菜や果物のジュースの他、トマト、桃、洋ナシの缶詰も関税が撤廃されるだろう。

◆ウール、綿、ビール、ラム肉(羊肉)
関税が解除されるだろう。

 

とのことです。

また、韓国とのEPAにより、平均的なオーストラリアのファミリーで$700の節約につながったと推計されているそうですが、同じような効果が今回の日豪EPAでも期待されています。

アボット首相は、「今回の日豪EPAは、オーストラリアの経済を活性化させることにつながる。」「職業の面でも、農業従事者にとっても、消費者にとってもよいことだ。」「日本車や日本の電化製品をより安く買えるようになるためオーストラリアの消費者にとっては有益な協定だ。」と説明しています。

さらに、オーストラリアの金融、教育、通信、法律に関するサービスも日本市場にアクセスできるようになるだろう、とも述べています。

 

一方、オーストラリア国内の農家からは、「牛肉の税率が減るまでの期間が長すぎる」という批判や、砂糖の関税が撤廃されなかったことに対する不満もあるとのこと。

また、酪農生産者からは、「乳製品の生産者には恩恵がない」という批判もあるそうです。
チーズについて、日豪EPAで対象となったのは、プロセスチーズを作るために輸入されるナチュラルチーズのみ。これは段階的に40%の関税から完全撤廃される予定とのこと。
しかし、ナチュラルチーズのままで店頭で売られるための輸入チーズは、29.8%を維持したままなのだそうです。

日本の酪農家は、関税を撤廃したらやっていけなくなるとして、関税撤廃に反対しています。
その意向を汲んだ形なのかもしれませんが、ナチュラルチーズとして消費者に売るためのチーズを生産輸出しているオーストラリアの酪農家は、日豪EPAに失望している、ということだそうです。

 

このような批判もあるものの、日豪EPAは、トータルで見てオーストラリアにとって有利である、との見方が、オーストラリア国内では強いようです。特に牛肉に関しては、オーストラリア側が明らかに勝ち組である、と評しています。

 
  • 日本ではどうなのか?

日本にとって、最も争点となった品目は、やはり牛肉の関税でしょうか。

牛肉の関税撤廃については、かねてから日本の畜産農家の強い反発がありました。

オージービーフには現在38.5%の関税がかかっていますが、今回の日豪EPAでは、

◆冷蔵肉:消費者が直接買う店頭用。1年目に32.5%へ下げ、段階的に下げ、15年後に23.5%に下げる。
◆冷凍肉:外食産業向けや加工用。1年目に30.5%。その後段階的に下げ、18年後に19.5%に。

というふうに、関税を下げることで合意しました。
冷蔵肉は、国産牛肉と競合することを考慮し、関税を高めに維持しているようです。

また、輸入が一定量を超えたら、それ以上は38.5%の関税を課す(セーフガード)ことで、日本国内の生産者に対する配慮をしています。

 

それでも、農業・畜産業関係者をはじめ、さまざまな立場の人達から、日豪EPAに対する根強い批判があるようです。
日豪EPAの大筋合意が報道されたのを受け、一般市民の方々が首相官邸前に集まり抗議の声を上げたこともあったようです。
日豪EPAをきっかけに、今後のTPP交渉でさらなる譲歩をせざるを得なくなるのでは、という懸念もあります。

また、日本国内では、牛肉が最も大きな争点として注目されていると思いますが、その他にも日本はさまざまな物をオーストラリアから輸入しています。
そして、日本はオーストラリアから輸入している貿易品目のうち88%について、10年以内に関税を撤廃する、としています。
これは過去最大の割合だそうです。
オーストラリアから輸入される多くの農産物が段階的に関税撤廃され、より安く日本に入って来やすくなると予想されます。

 

日本の報道では、あくまで『大筋合意』であり、正式な締結は「早ければ来年」というようになっていますが、オーストラリアのニュースでは、あたかももう正式に協定が結ばれたようなトーンで書かれているのが、両国の温度差を表しているように思いました。

 
  • オーストラリアに住む日本人としては・・・

今回の日豪EPA、私自身はとても複雑な思いを感じています。

私は現在パースに住んでおり、オーストラリアの暮らしや食などを当ブログでもたびたび取り上げてきました。
私にとって、今の生活は初めての海外生活です。
まず第一に、今まで当たり前だと思っていた日本での生活が当たり前でなかった、というオドロキから学ぶことがたくさんありました。
そしてさらに、オーストラリアの文化やライフスタイル、人々の働き方や社会の動き方を知れば知るほど、気づかされることがいくつもありました。
そうした一つ一つの発見は、私にとって宝物であり、多くの人とそれを共有したいという思いで記事にしてきました。

オーストラリアでの生活は、日本にいた時には想像もしなかった素晴らしいこと、楽しいことを私に教えてくれました。

でもそれは、日本よりオーストラリアが優れているから、という単純な話ではありません。

パースに住んでいると、日本食はこちらでものすごく人気だということがわかります。
日本に行ったことがある人、日本語を勉強している人、日本文化に興味ある人、日本人の知り合いがいる人・・・
パースではそんな人にたくさん出会います。

そんな時、私は『日本にはこんなに素晴らしいところがあるんだよ!』と、日本のことをもっと教えてあげたいなー、と思うのです。

考えてみたら、日本という国が国際的に認められているからこそ、私は日本人としてここに暮らしていられるんですよね。

自分が日本人であることに、やっぱりどこかで誇らしい気持ちを持っているんだなー、と、日本を離れて改めて気づかされもしたのでした。

特に日本の食文化は、世界に誇れる大変素晴らしいものだと個人的には思っています。
その日本の食を支える生産者の人達が、やっていけなくなるような経済のあり方というのは、日本という国にとって本当にプラスになるのだろうか・・・?
そんな風に考えてしまいます。
日本人として、何を守らなければならないのか・・・日々の食が、安全で信頼できる、ということは、何にも代え難い貴重なことではないでしょうか。
外国に食糧生産を委ねるということは、それを損なうことになりはしないか、という懸念を禁じ得ません。

一方で、日本に住む人達にもオージービーフやオーストラリアのフルーツや農産物を楽しんでほしい・・・という気持ちは個人的にはあります。それは、安いから仕方なく、ではなく、日本とは違う味を楽しんでほしいから。
日豪EPAが実現された場合、日本の消費者にとって、そうした選択肢が増えることにつながればいいな、と思います。

私自身、オーストラリアにいながら複雑な思いでこのニュースを知ったわけですが・・・

ただひとつ言えることは、我が家は当面、車も家電も買わないと思うので、日豪EPAの恩恵は受けられそうにありませーん(笑)。

 

参考記事:

Australia signs Free Trade Agreement with Japan (news.com.au)

Australians will benefit from Japanese Free Trade Agreement deal: Tony Abbott (news.com.au)

Farmers mixed on Japan trade deal (news.com.au)

Australian EPA: Let them eat beef (but not cheese)  (Japam Times)

「農家にこれまで以上の利益なし」 (Nichigo Press)

Chieko

Chieko
2013年4月よりパース在住。ライター&ブロガー。オーストラリアの食・子育て・生活を紹介するブログ「パースで手作りざんまい」、ネイティブ英語とは?がテーマの勉強ブログ「話す英語。暮らす英語。」執筆中。複数の企業サイトへ、食・旅行・教育に関する記事を寄稿中。2児の母。
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