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オージービーフにはホルモン剤が使われている?ホントのところを調べてみた。

2014.07.23.(Wed)Chieko By.Chieko

パース在住主婦ライターのChiekoです。

日本では、先週末あたりから夏休みに入った子ども達も、多いのではないでしょうか?

私はというと、冬のスクールホリデーが終わり、うちの子達は今週から再び学校に通い始めました。
けれど、朝は起きても暗いし、寒いし、今週は雨がちの天気が続くみたい・・・やっぱり春が待ち遠しい!

そんな冬真っただ中のここパースですが、うちの庭では、4月に植えたWestringia Smokey が、いつのまにか、白くてかわいい花をたくさん咲かせています。
オーストラリアのネイティブフラワーです。
冬の間も着々と、植物たちは成長を続けています♪

photo

 

さて、私はこれまで、オージービーフについての記事を2つ書きました。

本場のオージービーフを家庭でおいしく食べる方法!・・・を探る。

本場オージービーフのステーキを柔らかく焼きたい!おいしく食べたい!

最初の記事は、初めてオーストラリア本国で売られているオージービーフを食べ、日本で食べていたものとの違いにビックリしたこと。そして、おススメの調理法としてローストビーフのレシピについて書きました。
2つめの記事は、日本の牛肉とは違う、オージービーフの特徴や、調理のコツが少しわかってきて、固くなってしまいがちのオージービーフのステーキを柔らかくおいしく焼くコツについて、書きました。

今回は、このオージービーフの『安全性』について、考えてみたいと思います。

というのは、4月に日豪EPA協定が結ばれ(正式に署名されたのは今月でしたが)、注目された内容の一つとして、オーストラリアからの輸入牛肉の関税が段階的に引き下げられることが決まりました。
日豪EPA(日本・オーストラリア 経済連携協定)って何?という方は、日豪EPAとは?オーストラリア在住の日本人として考えてみた。 をお読みください。

その時に、日本のある専門家が「一部で発ガン性リスクが懸念され、日本では使用が認可されていない成長ホルモン入り牛肉の輸入がさらに増えることになる。」と、オージービーフの輸入が増えることについて、危険性を指摘していました。

それを知って、

オージービーフには本当にホルモン剤が使われているのか?それが本当に日本に輸出されているのか?
そして、パース在住の私達は、実はホルモン剤入りのオージービーフを食べているのか?

ということが気になったのです。

そこで今回は、特にホルモン剤に焦点をあて、オージービーフをめぐるオーストラリア国内事情について、調べてみました。

 

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    オージービーフの格付けシステム、Meat Standards Australia (MSA)とは?

 

MSA_1
 

オーストラリア最大のスーパーマーケット、Woolworthsで売られている牛肉には、よくこんな表示がついています。

Woolworthsの牛肉に限らず、お肉屋さんなどでも『MSA Beef』などと書かれて売られているのを見かけます。

MSAって、なんだろう?

とりあえず、『GRADED』と書いてあるので、何かしら検査や評価が行われたものなのかな・・・と漠然と考えていました。

しかし、どんな基準をクリアしたものなのか、気になっていました。
特に、ホルモン剤を使っているかどうか・・・この表示が、目安になるのでしょうか???

というわけで、『MSA』について調べてみました。

 

MSA とは、Meat Standards Australia のことです。

『MSAは、オーストラリアビーフを購買・調理する際に、食味(eating quality)について当たり外れがないように考えられたプログラムである。MSAには、牧場から食卓まで、生産物の提供に関わるすべての部門が含まれ、飼育方法、処理システム、カット法、熟成期間、調理法、といった幅広い工程について、食味への影響を計るための研究がなされている。』

『MSA認定のすべての牛肉は、おいしさの格付け(グレード)と、それを味わうのに適した調理法が提示されている。』

参考:Meat Standards Australia

とのこと。

つまり、そのグレードの牛肉を、定められた方法で調理した場合、消費者はそのおいしさを確かに味わうことができるという、『おいしさ』を保証するシステムだと言えます。
そしてそれを保証するために、肉牛の飼育から調理法にいたるまで、各段階で細かい手順や評価の基準が設けられているということです。

MSAプログラムに参加する生産者は、MSA規格のマニュアルに沿った飼育管理を行うことで、品質を保証し、MSAライセンスを使用することができます。
そして、食肉処理場では、品質が厳格に審査されます。
その後、MSA公認の審査員によって、カットされた部位ごとに、適した熟成期間や調理法と関連付けて、格付けされます。

このような段階を経て審査に適合したものが、MSAビーフなのです。

MSAについては、こちらの日本語の記事もわかりやすいです。
【レポート】消費者の味覚に基づいた牛肉評価基準~オーストラリア・MSAプログラム~

 

このMSA規格は、『MLA豪州食肉家畜生産者事業団(Meat & Livestock Australia)』という団体が行なっています。

MLAのサイトに、牛肉生産におけるホルモン剤の使用について、書かれているページがありました。
以下に、ザッと訳してみます。

MLA Meat & Livestock Australia のサイトより

――――

【Hormone growth promotants(HGPs)】

HGPsは、少ない資源・飼料で安全かつ健全な牛肉を生産するために使われ、生産コストを抑えて、手頃な牛肉を消費者に届ける助けとなる。

HGPsとして、

<自然由来のホルモン>
エストロゲン、プロゲステロン(女性ホルモン) テストステロン(男性ホルモン)

<合成ホルモン>
酢酸トレンボロン(ステロイドの一種) ゼラノール

の使用が認められている。成長を促進・刺激するために投与される。

インプラント形式で耳の後ろの皮下に埋め込まれ、100日から200日かけて少量ずつ体内にホルモンを放出する。

HGPsは約30年間オーストラリアの牛肉産業で使用され、オーストラリア国内で消費される牛の約40%がHGPsで成長している。
およそ2/3のオーストラリアビーフが海外へ輸出されている。

HPGsを投与された牛肉に含まれるホルモンレベルは、大豆油やキャベツや卵よりも少ない。

ホルモン剤は安全であり、オーストラリア政府 保健・高齢化省が2003年のレポートで『ホルモン剤で育った牛肉を食べても健康に影響はないようだ」と発表している。
オーストラリアでは、ホルモン剤を使うことは安全であるとされ、法律で認められている。

ホルモン剤を使うことにより、えさが少なくてすみ、飼育のコストも抑えられる。
環境への負荷や温室効果ガスが抑えられる。

ホルモン剤の国際的な使用状況としては、
認められている国・・・オーストラリア、ニュージーランド、アメリカ、カナダ、南アフリカ、日本
認められていない国 ・・・EUでは1998年以降、使用および使用された製品の輸入が禁止されている。

――――

MLA(豪州食肉家畜生産者事業団)は、「ホルモン剤を使った牛肉生産は安全であり、人体に影響はない」との見解のようです。
むしろ、生産コストを下げ、より多くの「おいしい」牛肉を生産するために、ホルモン剤はメリットがある、という感じ。
そして、オーストラリア政府としても、ホルモン剤の使用は法律で認めており、安全性は確認されている、との立場です。

つまり、MSA規格では、ホルモン剤の使用を禁止してはいないということです。
ただし、使わなければならないというわけでもない。MSAの表示では、ホルモン剤が使われているかどうかは判断できないということなのです。

また、MSA規格では、グラスフェド(牧草による飼育)か、グレインフェド(穀物飼育)か、については定義していないようす。
牛の品種も大切だが、十分な栄養がとれているか、も食味に大きく影響する、とのこと。
オーストラリアでは、完全に牧草で育てるだけでなく、牧草で育った牛を、出荷前に肥育場で穀類を食べさせ、適度に太らせるということ(Lotfeeding)も、場合によって行われているようです。

ちなみに、先に出てきたスーパー大手Woolworthsは、このMSAビーフを取り扱っているということで、大々的に売り出しています。
確かに、牛肉の品ぞろえはいつも豊富で、手頃な値段のものも多いと思いますね。

 
  • オーストラリアの消費者はホルモン剤牛肉を選ぶのか?

オーストラリアのスーパーマーケットは、先に挙げたWoolworthsと、Colesが、2大ジャイアントと言われています。

一方のColesは、2011年頭より、店舗で販売するすべての牛肉はホルモン剤(HGPs)を使用していないものに限る、と決めました。
当時、牛肉業界からたいへんな反発や批判が相次いだそうです。

しかしながら、MLA(豪州食肉家畜生産者事業団)が1000人の消費者を対象に行った調査では、およそ半数が「ホルモン剤を投与されている肉だったら(とわかっていたら)、これほど肉を食べなかった。」と答え、16%が「(ホルモン剤を使った牛肉に)2度と触りたくない」、15%が「他の人にもホルモン剤入りの牛肉を食べないよう、積極的に知らせる」と答えたそうです!

専門家は、HGPsを使わなかったら、もっと多くの牛を飼育しなければ牛肉の供給が足りなくなる、と主張していますが、消費者側は、ホルモン剤が使われていることすら知らずに牛肉を食べていた、という事実に、ショックを受けたようです。
そして、ホルモン剤を使っていない牛肉を選びたい、という意識はあるということがわかりました。

ホルモン剤に対する消費者の拒絶を、『感情的な問題だ』と表現した専門家や、「Colesの決定は、消費者を不必要に不安にさせている」と批判した役人もいました。
Coles側は、この決断について、特に健康や安全性の問題だとは明言せず、「消費者の声に耳を傾けるべきだ」とコメントしています。
つまり、消費者のニーズに応じるために、ホルモン剤を使っていない牛肉のみを扱うと決めた、ということです。

実際に、Colesで売られているオージービーフには、全て”NO ADDED HORMONES”の表示が!

beef_coles
 

これをきっかけに、他の小売業者も同様にNO HORMONESに向かうのでは・・・と、牛肉産業界では懸念されたようですが、今のところWoolworthsはホルモン剤に関しては明言していません。
以前から、Woolworthsのmacroというオーガニックブランドの牛肉は、HGPsを使っていないそうです。
が、今後そういったHGPs不使用の牛肉を増やしていく、というような予定はないらしいです。

今のところ、オーストラリアの2大スーパーマーケットは、この点については方向性が真っ二つに分かれている、という感じですね。

オージービーフはオーストラリアのたいへん重要な産業の一つであり、業界側は、ローコストで生産量が増やせるホルモン剤を使いたいのでしょう。

が、オーストラリアでは、健康や環境への関心が高い人も多く、オーガニック食品も人気があることから、ホルモン剤不使用の食肉を求める消費者が多いことは、十分にうなずけます。

参考記事:Hormone beef off the shelves at Coles in 2011

 
  • ホルモン剤問題、輸出への影響は?

オーストラリア国内では、ホルモン剤(HGPs)は安全であり、牛肉産業にとって有効である、と国や食肉産業は主張しています。

ところが、こんなことがありました。

今年の4月、ロシアがオージービーフの輸入を全面的に禁止しました。
理由は、オーストラリアからロシアに輸入された牛肉の中で、トレンボロンという合成ホルモンが検出されたからです。
これは、先に書いた通り、オーストラリアでは使用が認められているHGPsですが、ロシアでは認められていないのです。
この輸入禁止措置は、政治的な問題も無関係ではないのでは、という見方もありますが、とにかくオージービーフの生産者にとっては、痛手であることに変わりありません。

 

オーストラリアは、このロシアの件を受け、中国マーケット向けの牛肉について、HGPsの混入がないことを一層厳しく検査することにしているそうです。
中国では、合成ホルモンは動物への使用が禁止されており、自然のホルモンは、治療のためには使用を認めるが、食用の動物には使用が禁止されているそうです。

中国は、ロシアの輸入禁止措置の後で、オージービーフにホルモン剤が残留しているかたいへん注目していると思われるため、検査を強化することは今後も中国への輸出を継続するために重要だ、とオーストラリア側は考えているようです。
特に、現在ロシアという市場を失ってしまっている以上、中国という市場は決して逃せないわけですね。

現在、EUではホルモン剤の使用が禁止されています。
そのため、オーストラリアからEUへ輸出されるオージービーフは、すべてHGPsを使用していないものに限っている、ということです。

また、オーストラリアではHGPsの使用が認められていますが、タスマニア州では、州の法律としてホルモン剤の使用を禁止しているそうです。

 

一方、日本は、国内での牛の飼育には、成長促進の目的でホルモン剤の使用は認められていないようです。
が、輸入牛肉に関しては、自然由来のホルモンも合成ホルモンも、基準以下ならば残留が認められています。

日本国内で食べるオージービーフにはホルモン剤が入っている、と言われるのは、こうした流れを踏まえてのことなのですね。

 

 
  • ホルモン剤は危険なのか?

ここが一番気になるところですが、実際のところ、(オーストラリアのように)過剰でなければホルモン剤は安全だ、という説もある一方で、現実として食肉への使用や残留を禁止している国もあるのです。

科学的にどうなのか、ということは、専門家の間でもさまざまな見解があると思いますので、論じるのは非常に難しい問題です。

ここでは、一例として、ホルモン剤を過剰に摂取した場合にこんなリスクが考えられる、と言われていることを、あげてみたいと思います。

一番に指摘されるのが、乳がん・子宮がん(女性)、前立腺がん(男性)など、ホルモン依存性のガンが増えるのでは?ということです。

WHOのデータによると、ホルモン剤使用を禁止後、EU諸国の乳がん死亡率が大きく下がった、という報告もあるそうです。
禁止措置だけが原因とは言い切れない面もあるようですが、気になる内容ではありますね。

また、乳がん細胞に合成ホルモンを投与した場合、がん細胞が激増する、という研究もあるそうです。
すでにガンのリスクを抱えている方にとっては、とりわけ合成ホルモンは危険と言えるかもしれません。

さらに、私自身が気になっていることとして、特に思春期前の子どもに、ホルモン剤がどんな影響を及ぼすか、ということです。

牛に投与されるホルモンは、人間にとっても不可欠で重要な作用を及ぼす、女性ホルモン、男性ホルモン(またはそれに似た合成ホルモン)です。
たとえば女性であれば、ある程度性的に成熟していれば、すでに十分な女性ホルモンが分泌されているため、多少過剰摂取しても影響は比較的少ないと言われます。
ところが、まだ女性ホルモンの分泌が少ない思春期前の女の子は、このような形で女性ホルモンを(不自然に)摂取することで、発育に影響を受ける可能性もあるのでは、との指摘があります。成長が早く止まったり、生理周期が不安定になったり、不妊の原因になる、ということが可能性として挙げられています。

 

あくまで可能性、という話ですが・・・

私自身は、ちょうど思春期に入る娘がいますし、しかも肉大好き娘なので、こうした話題はやはり気になりますね。正直。

 

gingin

では、パースで、ホルモン剤不使用、昔ながらの100%牧草飼育で育った、ナチュラルなオージービーフは食べられるのか?
どこで買えるのか?
普通のオージービーフと味は違うのか?

・・・について、次回書こうと思います!

 

 

Chieko

Chieko
2013年4月よりパース在住。ライター&ブロガー。オーストラリアの食・子育て・生活を紹介するブログ「パースで手作りざんまい」、ネイティブ英語とは?がテーマの勉強ブログ「話す英語。暮らす英語。」執筆中。複数の企業サイトへ、食・旅行・教育に関する記事を寄稿中。2児の母。
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